黒谷和紙

黒谷綜布(紙布)Kurotani Paper Cloth

黒谷綜布

経糸(たていと)に絹糸を、
緯糸(よこいと)に黒谷和紙の紙糸を使い
丹後ちりめんの技で織り上げられた紙布(しふ)

「黒谷綜布」(くろたにそうふ)は、手漉きの黒谷和紙を材料に織り上げられた布です。
紙製の布は一般に「紙布」(しふ)と呼ばれていて、その中でも黒谷和紙を材料とするものを特別に「黒谷綜布」と名付けています。

特徴

和紙の独特の風合いと、織物のしなやかさを備え、軽くて通気性がよい布です。 麻のようなさらりとした肌触りと、表面に出ている独特のふくらみ(フシ)が、手漉き和紙を使用している紙布の証明です。 和装、洋装、インテリア、小物など、日常生活の様々な用途で「和の暮らし」をお楽しみいただけます。

制作方法

  • 1.京都産の原料(コウゾ)を使って手漉きで薄く黒谷和紙を作ります。
  • 2.黒谷和紙を細長くスリット状に裁断します。
  • 3.裁断された紙をよって、糸状に加工します。(撚糸)
  • 4.経糸(たていと)に絹糸を、緯糸(よこいと)に黒谷和紙の紙糸を使って、丹後ちりめんの技で織り上げます。
  • 5.用途に応じて織りあがった布を染色します。 京鹿の子絞りなど高度な技法で多彩な表現を施します。

「黒谷綜布」誕生ストーリー

和紙は衣服として、「紙衣」(かみこ)と呼ばれ丈夫で軽く、防寒性に優れた衣類として江戸時代には広く活用されていました。紙布も同様、長い歴史の中で幅広く普及したものの、手間がかかる事、近代紡績の技術におされ、近年ではあまり注目されてきませんでした。

試作品の開発に着手

細矢教授や丹後ちりめんを手がける機屋さんなどと一緒に研究を重ね、2015年(平成27年)に試作品を完成させました。
細く裁断した和紙を「こより」のようにねじってつなげて糸にして、絹糸と組み合わせて製織するという基本形ができあがりました。

商品化に向けて試行錯誤の連続

商品化に向けては、多くの課題がありました。

織物の柔軟性は漉き上げる紙の厚みによって大きく変わります。
まず、織物の柔軟性を出せる最適な厚みと強度を持つ和紙を作る事に力を注ぎました。

次は撚糸の段階です。
手漉き和紙は機械漉き和紙の様に長い和紙は作れません。
決まったサイズの和紙にスリットをを入れて細い帯にし、よっていくので約60cmごとに和紙の折り返し部分ができ、
撚糸加工の後でも糸には折り返し部分にふくらみ(フシ)ができます。
このフシが手漉き和紙で作った糸で出来た布の特徴となります。

しかし、フシがあると、撚糸加工のときに糸が切れたり、織るときに織機に引っかかったりして、スムースに織りあがりませんでした。
何度も何度も与謝野町の織り屋さんでテストしたり、京丹後市にある試験研究機関(京都府織物・機械金属振興センター)に通って技術相談や試験を繰り返したりして、ようやく、安定した品質が確保できるようになりました。

インテリア分野へ進出

また、紙布が染色の工程にも耐え得るかどうか、京鹿の子絞振興協同組合にご協力いただいて何度もテストを重ねました。
「京鹿の子絞り」は、京都を代表する伝統産業のひとつで、繊細で緻密な色彩表現や、「くくり」など手仕事による高度な防染技術などによって生み出される芸術的な美しさが特長です。

これまでから京鹿の子絞振興協同組合さんにはコラボ商品の開発などでお世話になっていて、黒谷和紙への染色技術は確立しておられました。
しかし、今回「紙布」という未知の素材が、伝統の染色という高い要求水準を満たすことができるか少し心配でした。

そうした中で、完成品のモデル的な製品づくりを兼ねて、インテリアとしての几帳を試作する機会に恵まれました。

絹糸と和紙の両方の染色に通じておられる京鹿の子絞振興協同組合の組合員さんと色デザインや染料、技法の選択などについて何ヶ月も打ち合わせとテストを続けました。
そしてついに、同組合の皆様の熱心な研究と技術によって、「紙布」が優雅な美を表現するキャンバスとしても十分な働きができることを証明していただきました。